ESS(電子スクリーン症候群)とは
(*デジタルスクリーン症候群とも訳されます)
スマホ・ゲームの害というと、視力の低下や、依存症による長時間使用が真っ先に連想されます。
しかし、短時間の使用であっても、スマホ・ゲームで成績が下がったり、切れやすくなったり、コミュニケーション能力の発達が損なわれることが明らかとなってきました。ESSは、こうした広い視野からこの問題に取り組んできた米国の小児精神科医のダンクレー博士が提唱している概念です。
ESS(Electronic Screen Synd) 電子スクリーン症候群 とはスマホ・タブレット・ゲームなどのスクリーンによる刺激で子どもの脳が変調・疲弊してしまった状態を指します。スマホ・ゲームの繰り返しで、子どもの脳は過敏化し、変調状態に陥り疲弊して、落ち着きがなく、イライラして、コミュニケーション能力などの社会性の発達が遅れ、それがまた新たなストレスになっていきます。
リセットプログラムとは
(*デジタルデトックスとも訳されます)
この悪循環をどうするか。その回答が、リセットプログラムです。ダンクレー医師は、保護者をエンパワーして、3週間のスクリーン断ちをするというプログラムを開発し実践しています。その結果、発達障害と診断されていたけれど実はESSだったといった例も珍しくありません。
「実際にはどうやるの? 3週間断ったあとは?」
などなど、疑問が尽きないところですが、アマゾンを見ると、彼女の本には世界中から、子どもが良くなった、家族が幸せになったというコメントが大量に届いています。日本でも同様の事例が集まりつつあります。ダンクレー医師は「リセットプログラムは、罰ではなく、子どもの未来の能力を最大限に引き出すための"実験"ととらえて欲しい」と述べています。
ESSリセット研究会は、ESSとリセットプログラムを日本に紹介しその普及に努めています。それは、何といってもこのプログラムが、あきらめかけている保護者を勇気づけ、反対する家族や子どもを巻き込んでいく準備の段階から、丁寧にノウハウを解説した、普通の保護者にも実践できるものだからです。
ESSとは? リセットプログラムとは? まだ日本ではほとんど知られていない内容の連続に驚くばかりでなく、きっと、子どもの未来を明るくする様々なヒントが得られるのではと信じています。
ダンクレー医師の動画
ダンクレー医師 動画書き起こし
ESS(電子スクリーン症候群)の動画
NHKの取材を受け当研究会の東海林渉 東北学院大学准教授が解説しています。
ウィズコロナの近未来
文献
動機づけ面接を始める・続ける・広げる 愛着障害・トラウマ・発達障害とESS―MIの新しいフロンティア?
雑誌 精神療法vol.48.2(225-234) 2022 ESSと動機づけ面接の総論です。
事例 (プライバシーに配慮し一部改変を加えています)
(30代医師より)
スクリーンの害悪は、伝統的な精神医学の体制において注目されているとは言えない。ESSではスクリーンが衝動性を高め、情動を不安定化させると主張する。ただ、そのような事例はあっても少数で、多くは衝動や情動のコントロールが効かないが故にスクリーンにハマっているのではないか。ほんの数週前までそう思っていた。
しかし、最近の実体験から、その害悪を確信するに至った。
産業医として扱った事例。35 歳の男性が、2カ月連続で 60時間の時間外労働があり、長時間勤務者面談となった。仕事にやりがいを感じ上司との関係もよかったが,疲労の蓄積が強く,仕事に集中することが難しいという。
詳しく聞くと,2歳になる子どもに言葉の遅れがあり,注意散漫で,人と視線が合わず,母親が呼びかけても振り向かない。体をゆするなどの常同行動があり,制止すると癇癪を起こす。夜ふかしで 11時ごろまで寝ない。
小児科医には発達障害の可能性があると言われ心配でたまらないと涙ぐんだ。下の子の手が離せない時にスマホを見せて静かにさせているが最小限にしているという。ESS(電子スクリーン症候群)の可能性を説明し,試しに 3週間の完全なスクリーン断ちをしたところ 2週間で視線が合いやすくなり,4週間後には発語が増え,笑顔で両親のもとへかけ
よってくるようになった。(プライバシーに配慮し一部改変しています)
(40代医師より)
以前、我が家の朝は戦争であった。朝食時、何気ないこちらの言葉に、当時小3の娘が突然泣いたり、怒ったりしていた。娘は感情の起伏が激しいのかと思っていた。また、もしかして発達障害なのかと悩んだ時期もあった。少しでも症状を改善したいと、夜泣きに使われていた「抑肝散」を内服させていた。しかし、家庭教育講座でネット依存の話を拝聴して、あっと思った。もしかして、ネットやゲームが原因?ネットやゲームが出来ないようにデバイスを取り上げた。そうすると、「抑肝散」の力を借りずにすむようになった。ただ、ちょっと不思議だったのは、ネット依存というには、デバイスを取り上げられても、あまり反応がなかったということであった。それが、電子スクリーン症候群(ESS)について今回知って、娘はこれだったのかと思うようになった。
確かに、電子スクリーンがこれだけ世の中に浸透している状況では、デバイスを上手に使えるようになるために、幼い頃から使わせようと親が考えるのはよくわかる。実際、私もそうであった。一方で、ESSについて知っていたら、どうだろうかと思う。よかれと思ってやったことが、実際は反対であったと知ったら。電子スクリーンが、個人差はあるにしても、これだけ子供の脳に影響を与えることを知れば、デバイスを与えたくないと考える親が多いのではないかと考える。漏れのない情報を、自分たちの周囲からでも、少しでも早く、上手に伝えていく必要があると考える。 (プライバシーに配慮し一部改変しています)
(30代医療職より)
私の4歳の娘の体験談です。うちの子どもはスマホで動画を見ていて(初めはトイレに座るのをサポートするためのアンパンマンの動画を夫が見せたのが始まりだったと思います)、最初は動画1つで終わっていたのに、気づけば自分で次々と動画を選んで見るようになり、気づいたら1〜2時間経っている、みたいな感じでした(汗)。
スマホを取り上げられて泣きじゃくる娘、
「次で終わりって約束したでしょう。約束守れないのはダメだよ」と叱る夫(そして「あなたが最初に見せたんでしょう」と夫に冷たい視線を送る私)・・・これが毎日繰り返されて私自身疲れていました。
私は夫が出張中の週末に勝手にスマホ断ちを強行しました。
「スマホはもうないよ」と子どもに告げ、「見たい!」と泣きじゃくる子どもと2日間過ごしました。
スマホを見たがって私にすがりついてくる子どもの姿を動画に撮り、出張から帰ってきた夫に見せて、「依存症みたいだよね・・・」とポツリ。
今は夫のスマホが気になっているので、夫のスマホにも切り込んでいきたいとタイミングを狙っているところです(笑)。(プライバシーに配慮し一部改変しています)
(40代保健師より)
ESSについて学び、小児科の最新のトレンド(10年足らずで子どもの双極性障害が40倍、子どもの障害の半分を精神疾患が占める) に驚き、子どものスクリーンへの暴露時間の増加とこれらの現象に明白な関係性があるも、そのことについて、自分を含め、社会で十分に認知されていないされていないことに怖さを感じた。
ネットゲーム依存状態にあり対応に疲弊した家族から相談を受けた、ADHDの診断を有する思春期男子2例を同時期に経験した際、これまではADHDによる衝動性の高さにより自制困難な状態にあると想定していたが、本書に触れたたことで、因果が逆である可能性もあり得るとの気づきが得られた。このことで、親への助言や指導内容に幅を持たせることができる。
また、私自身も寝室にスマホを持ち込まずリビングに置いておくことにチャレンジしたところ、程なく朝の目覚めが快適となったほか、思春期の娘もスマホをリビングに置いて自室に向かうようになるという、嬉しい変化に恵まれた。自分と娘の健康を守るためにこの習慣は維持したい。 (プライバシーに配慮し一部改変しています)
(20代医師より)
第2章で提示されているエイデン君の事例を読み、私が医学生時代に小児科実習で経験した小学生男児の症例を思い出しました。彼はもともと基礎疾患はなかったのですが、幼少期から大のゲーム好きで自宅では熱狂のあまり大声で叫びながらプレイしていました。某日、スプラトゥーンというゲームをしている際に興奮のあまり、叫び声をあげた後に心室細動を起こし、心肺停止状態で意識不明となっている所を母親に発見され、救急搬送されました。蘇生後、幸いにして目立った後遺症もなく一命は取り留め、入院中に「お母さんからもうゲームはやらないように言われてるんだよね」と言いながら、ゲームの攻略本を眺めている姿が印象的でした。
「ゲームで心肺停止」というワードが当時の私にとって珍しいものとして映りましたが、調べてみたところゲーム障害による死亡例は世界各地で確認されているようです。第2章を読むとそれが決して稀有な事象ではなく、どんな人にも起こり得るものであると実感しました。業務上で思春期児童を診療することが多いのですが、少なくない人数でスクリーン曝露の影響を少なからず受けているように感じます。ESSについては心身の発達のみならず、命に関わるような重篤な健康被害に関わることも念頭に置き、真剣に考えていかなければならない問題であると改めて感じました。
もっと読む
ツール&教材
生徒指導用 3点セット リセットプログラム
ダウンロード可 (下のボタンより)
[1] 基本資料:子どものESS (8ページ)
[2] 手順書 (26ページ)
[3] 家庭用ワークシート(9ページ)
・学校関係者向け資料
ESSの動機づけ面接
おすすめ
スクリーンに敏感な子どもを守るために
合理的配慮
&
ガイドライン
学習会
ダンクレー博士のReset Your Child's Brain 学ぶ
ESS&リセットプログラム学習会
スマホ・ゲームで変調・疲弊した子どもの脳を救うには
朝、お子さんは元気よくおきますか?
夜はぐっすり眠れている様子ですか?
最近、対話が減っていませんか?
依存症までいかなくても、スマホ・ゲームで成績が下がったり、切れやすくなったり、コミュニケーション能力の発達が損なわれることが明らかとなっています。こうした問題に幅広く取り組んできた米国の児童精神科医の著書「Reset Your Child's Brain」の学習会です。2022年5月には待望の訳本が出版されました。
電子スクリーン症候群ESS(Electronic Screen Synd)、または「デジタル脳」とはスマホ・タブレット・ゲームなどのスクリーンによる刺激で子どもの脳が変調・疲弊してしまった状態を指します。スマホ・ゲームの繰り返しで、子どもの脳は過敏化し、変調状態に陥り疲弊して、落ち着きがなく、イライラして、コミュニケーション能力などの社会性の発達が遅れ、それがまた新たなストレスになっていきます。
この悪循環をどうするか。その答が、完全回復プログラム(リセットプログラム)です。ダンクリー医師は、保護者をエンパワーして、3週間のスクリーン断ちをするというプログラムを開発し実践しています。その結果、発達障害と診断されていたけれど実はESSだったといった例も珍しくありません。
「実際にはどうやるの? 3週間断ったあとは?」
などなど、疑問が尽きないところですが、日本でも、このプログラムで子どもが良くなった、家族が幸せになったという事例が出てくるようになりました。ダンクリー医師は「リセットプログラムは、罰ではなく、子どもの未来の能力を最大限に引き出すための"実験"ととらえて欲しい」と述べています。
今回、ゆるーい思春期ネットワークではリセットプログラムの学習会を企画しました。それは、何といってもこのプログラムが、反対する家族や子どもを巻き込んでいく準備の段階から、丁寧にノウハウを解説した、普通の保護者にも実践できるものだからです。
ESSとは? リセットプログラムとは? まだ日本ではほとんど知られていない内容の連続に驚くばかりでなく、きっと、子どもの未来を明るくする様々なヒントが得られるのではと信じています。
【概要】 毎週月曜・木曜 夜22:10~23:00。zoomを使用します。
毎週月曜・木曜は同じテーマを扱います。片方だけでなく両方出ることもできます。
毎回、要点のまとめと録音のファイルを送付します。
参加できなかった場合も安心です。(技術的トラブル発生の場合はご容赦下さい)
【講師】 寛容と連携の日本動機づけ面接学会代表理事 医学博士磯村毅
【内容】
ダンクリー博士の著書 Reset Your Child's Brainの訳本「子どものデジタル脳完全回復プログラム」
を中心に日本での事例も交えながら学習します。全5回(5週間)で概要と具体的な方法を学びます。
【対象】子どものデジタル脳に興味のある人ならどなたでも。
気になる子どもがいる教職員や援助職、保護者の方など。
【期間】 第10期2024年8月19日(月)~9月19日(木) 受付を終了しました
【開始】 2024年8月19日(月)22:10~23:00 ※復習しながら進むので、途中参加も可能です。
【受講料】 10,000円 ★未成年のお子さんをお持ちの方は5,000円 (途中参加でも割引はございません)
【サポート】 参加者は学習会用メーリングリストに登録し、諸連絡や資料の追加、質疑応答などのサポートを行います。
★依存症の前のESS(電子スクリーン症候群)の段階であれば、リセットプログラムが効果的なことがあります。特に幼少時であれば期待できます。
★発達障害と診断されていた幼児がリセットプログラムで改善し、発達障害ではなかったことが明らかとなる事例を多数経験しています。